2013/07/17

One More Week


セカンドアルバム発売 7月24日まで あと一週間となりました



あれから商品の準備も無事に終わり(この際 無事と言うことにします 笑)
先日の先行販売で買って頂いたお客さん サンプルを渡した友人達より
とても嬉しい声を頂いております

こうして 自分の中の固く結ばれた何かが
少しずつ紐解かれていく様な感じがします



COOKIE SCENE ( http://www.cookiescene.jp/top.html )という
僕自身もファンである音楽情報サイトがありまして
そちらでレビューを執筆されている松浦 達 氏に
今回のアルバムのレビューを書いて頂きました

素晴らしいレビューです


__________



tomy wealth『Table Manners』 ―表層の儀式を越えて
文=松浦 達(COOKIE SCENE)

1)
象徴を読みとろうとするものは、危険を覚悟すべきである。
芸術が映しだすものは、人生を観る人間であって、人生そのものではない。
(『ドリアン・グレイの肖像』、オスカー・ワイルド著より)
アルバム・ジャケットには書棚を前に、白い布を顔に巻いた男女がテーブルを前に、向かい合っている象徴的なものになっており、タイトルは『Table Manner』。今、マナーという言葉は拡大解釈されているきらいがあり、作法、儀式的な、と訳しても違ってくるだろうと思う。まして、テーブル・マナーという儀式性には、旧来は社交の場のみならず、政治の場としての機能があった。そして、テーブル・マナーを通じて行なわれる「食事」というのは端的にセクシャルな何かの予見せしめるものであった。ここでの男女は正装しているが、顔に白い布が巻かれている。だから、実際にテーブル・マナーを知っている二人なのか、儀式的なものを祀るために背後に書棚があるのではないか、隠喩のような幾つもがよぎる。
実際に、tomy wealthはこのアルバム・タイトル名、ジャケットに関して取材にて、「テーブルは表という意味があり、表向きのマナー、人と人との間に介在する何か」、「ジャケットはルネ・マグリットの“Les Amants”のオマージュ」と述べている。表向きのマナーとマグリット。この二つの要因を止揚し、10編のタペストリーのように編み上げること、それが本題でありながら、副脈でもあるような気がする。

2)
00年代からジャジーでオーガニックなヒップホップ作品が増え、良質なアーティストも育ち、ムーヴメントも結実したものもあったが、その中でもイージーリスニング的に消費されるものも少なくなかった。いかにも大ネタをフックし、それっぽいムードを作り上げ、クラブ・ジャズ、エレガントなIDM、ポスト・クラシカル的な音楽とのシンクもあり、雑貨店やカフェで大量に消費された。
元来のストリート・ミュージックとしてのヒップホップにATCQのようなセンスを入れ、時に、ベックのようなフォークやブルーズにベースを持つアーティストがその可能性を拡張していき、《ニンジャ・チューン》辺りのサウンド、そして、彼自身が幅広いリスナー遍歴を持つこともあり、このセカンド・アルバムは彼のキャリアと美学が濃密に立ち込めるロマンティックで翳りの美が抜きん出たともいえる内容になっている。

3)
ここで、初めて彼の作品に出会う方もいると察するので、少し説明しておくに、tomy wealthとは、ドラマーとして活躍しながら、ビートメイカーである Takayuki Saekiのソロ・プロジェクト。ドラマー歴は15年以上を越え、セルフ・トラックでは全て自ら叩いたドラム・プレイからサンプリング、エディットするというスタイルを当初から貫いている。 更には、ドラマーの枠を越え、ピアノやストリングスを取り入れた繊細なサウンド・メイク、どこか愁情を帯びた旋律から楽曲そのものに漂う麗美さには定評がある。このセカンドでも架空短篇映画、またはそのサウンド・トラックのように構成を編んでいったところがあるが、アルバム総体から伝わるものも大きい。
09年のファースト・アルバム『Hotel Otherside』をリリースし、その後もライヴ活動、多くの楽曲提供、リミックス・ワークを精力的におこなってきたこともあり、セカンド・アルバムと言っても、彼自身の名前はどこかで見ることが多かった。

4)
インタルード的な冒頭の「TACT」が招待状のように、アルバムへの扉を静かに開け、彼のドラムがしなやかにかつ蛮勇に叩かれ、KAMOME KAMOMEの向達郎氏のキャリア初の客演参加となる「Automatism」のダイナミックでスムースな曲で一気に視界が広がる。同曲でのMVにおけるモノクロのシックでシンプルな映像越しに、改めて“表のルール”とは何か、希求するように、その後、潜航してゆく。これまでと変わらず、サンプリングの妙、ピアノ・ループ、切なさが沸き起こるメロディ・ラインが活き、よりソフィスティケイティッドもされている。
5曲目の「BLOOD SPICE」でのビートの昂揚感を折り返し、後半は、いつかのブリストル・サウンド、アブストラクト・ヒップホップといわれたDJ SHADOW、MASSIVE ATTACK、PORTISHEAD辺りのレファレンスがより視える。40分にも満たないゆえに、あっという間に過ぎてしまうと感じるかもしれない。しかし、冒頭に書いたように、“表のルール“を越えた、時間で聴くことでこの作品の真価はじわじわとリスナーを掴んでゆくとなる、と思う。


Satoru Matsuura / Cookie Scene
__________



以上

僕自身 このレビューを読んで
とても頷ける部分が多く 素敵なテキストを頂いたと感謝しております


ありがとう 松浦さん
今後とも 宜しくお願いします。